Presented by
Peter Clay
2023年の今、映画を本当の意味で
「鑑賞」してない人が増えていると感じます。
私が幼かった頃とは、
映画というものの価値観が大きく変化しました。
VHSがDVDに、DVDがデータに。
TSUTAYAがサブスクに、劇場からスマホに。
世の中に映画が増えていくと同時に、映画を観られる環境が増え、
新型コロナウイルスの影響により、更に増加していく一方です。
こう言ってる私もサブスクは利用していて、確かに便利で、
映画業界がこうなることも必然だったかもしれません。
ですが、技術が上がっていくと同時に、
何か大事なものを置き去りにしてしまっているのではないか、
とも思います。
劇場の大きなスクリーンに映し出される壮大な映像。
胸を打つ程の、大音量のサウンド。ポップコーンの香り。
初めて劇場で映画を観たときの感動は、今でも忘れられません。
人間は、慣れてしまう生き物です。
慣れていくことや「当たり前」になっていくということには、
必然でありながらとても怖い側面があり、
人生を侵食する悪いウイルスのようなものだと
感じられることがあります。
なぜなら「慣れ」というものは、
人の成長を阻害するものになり得るからです。
スマホを開いて『NETFLIX』や『U-NEXT』を開くだけで、
何万作品もの映画が見放題なのが当たり前、
加えて今では一時停止や早送り、10秒飛ばしも当たり前。
そしてもはや観てもいない、
『ファスト映画』さえも当たり前になってきています。
これらが普及したこの現代社会においては、
「映画」そのものの価値が見失われつつあると感じます。
これは本当に悲しいことです。
ましてや自主制作映画となると、
鑑賞者側の反応はあまりよくありません。
人々は超大作を片手で観ることに慣れてしまっているし、
まだ観てもいないのに「低予算だから」
「クオリティが低いから」と、
知ろうともせずに撥ねつけられてしまいます。
このような鑑賞者一人ひとりの意識を変えるというのは不可能で、
強要するものでもありませんが、
これからの映画業界を支えていく映画作家たちの素敵な作品を、
この日くらいは「鑑賞」してほしい。
そんな思いから、
今回が初となる『CFF2023』を開催するに至りました。
劇場とは、本当の意味で映画を鑑賞することの出来る
唯一の場所であると思っています。
今回ご応募頂いた158作品を鑑賞し、
自分の信じているものを形にしようと
ひたむきに努力をする人たちが、
こんなにも多くいることを再確認しました。
私の行動で何がどう変わるかは分りませんが、
ご来場者様一人ひとりに、
少しでも心で何かを感じていただけますように。
私たちは弱く、当たり前に流されてしまいがちです。
本質的な意味で人間は1人だから、
何事も「当たり前」にしてはいけないと思っています。
映画を「鑑賞」し、心で感じる。
そんな大切なことを思い出せる映画祭にします。